服薬指導にすぐ使える薬物動態
最終更新：
kusurisuku 2021年08月05日(木) 06:42:02履歴
「薬物動態」とは、"体の中に入った薬の動き"を"血液中の薬物濃度の変化"で明らかにする学問です。
添付文書に記載されているパラメーター*(t1/2、Vdなど)を使うことによって薬の動きがわかります。そうすることで、患者さんからの「この薬は飲んでからどれくらいで効くの？」や「腎臓が悪いんだけどこの薬は飲んでも大丈夫？」といった質問にも、根拠をもって答えることができるようになります。
＊パラメーターとは、数学のy=ax+bの"y"や"x"のような値を代入する記号のことをいいます。
薬物動態のパラメーターからわかること
代表的なパラメーターとして以下のものがあります。
・t1/2(半減期、[hr])＊hr＝〜時間
血液中の薬物濃度が半分になるまでにかかる時間です。
・tmax(最高血中濃度到達時間)
薬の最高血中濃度に到達する時間です。
・Cmax(最高血中濃度)
薬を飲んで最も高くなる血中濃度です。
・AUC(血中濃度曲線下面積)
血中濃度のグラフの面積です。
・F(バイオアベイラビリティ[%])
飲んだ薬がどれだけ血液中に到達するかを表します。
静脈注射はすべて血液中に入るので、Fは100%となります。
・Vd(分布容積[L/kg])
薬が血管から組織にどの程度広がるのかを表します。
イメージとしては、粉ジュースを作るときの水の量が分布容積にあたります。
図
＊本来、体内に入った薬は分布する場所(例：肝臓や腎臓、脂肪など)によってそれぞれ濃度が違います。
ですが、Vdは「薬はどこに存在していても、すべて血中濃度と同じ濃度で体内に存在している」と仮定し求められています。
＊＊細胞外液が増える
・CL(クリアランス[ml/min])
一定時間内に、血液から体の外に薬をどれだけ排泄できるかを表します。
・t1/2
�，い弔�ら薬が効き始めるのか
薬には、"すぐに効く薬"と"効くのに時間がかかる薬"の2種類があります。
どちらの薬かどうかは、「服用間隔(時間)÷薬の半減期(時間)」の値でわかります。
このときに、計算結果が
【0〜3】の間であれば"効くのに時間がかかる薬"
【3〜4】の間であれば"グレーゾーン(血中濃度が上がらない場合もある)の薬
【4】以上であれば"すぐに効く薬"となります。
つまり、まとめると以下のようになります。
画像
|〜すぐに効かない〜|グレーゾーン|〜すぐに効く〜|
0-------------------3-------------4---------------∞(服用間隔/半減期)
また、"すぐに効かない薬"だった場合、「半減期(時間)×5」をすることで薬が効き始めるおおよその時間がわかります。
実際に代表的な薬であるロキソニンとアムロジピンで計算してみます。
ちなみに、t1/2は単回投与よりも連続投与のほうが実際の飲み方に近いため、より正確に予測しやすくなります。、
例1.ロキソニン
ロキソニンであれば、通常1日3回飲むので服用間隔は8時間となります。
また、半減期は添付文書の薬物動態の値から約1.25時間とわかります。
上記の式にこれらの値を当てはめると、8(時間)÷1.25(時間)＝6.4となります。
値が4以上なので、「ロキソニンは"すぐに効く薬"である」とわかります。
例2.アムロジピン
アムロジピンは、通常1日1回で飲むので服用間隔は24時間、そして半減期は35時間です。
上記の式にこれらの値を当てはめると、24(時間)÷35(時間)＝0.68となります。
値が0〜3の間なので、「アムロジピンは"すぐに効かない薬"である」とわかります。
そして、薬が効き始める時間は35(時間)×5の175(時間)、つまり飲み始めてからおおよそ7.3日目となります。
�¬瑤鮹羯澆靴討�らどのくらいで効かなくなる(副作用がなくなるのか)のか？
一般的に、薬が体内から消えるのにかかる時間はt1/2の約５倍と言われています。
それは、t1/2が5回続くと1/2×1/2×1/2×1/2×1/2、つまり元の血中濃度と比べて1/32(3/125%)となり、ほとんどの薬は体内から消えていると考えられるからです。
ただ、高齢者やVdが大きく組織移行性の高い薬に関しては、体外に排泄するのに時間がかかるため注意が必要です。
実際にアムロジピンで計算してみます。
アムロジピンのt1/2は35時間ですので、薬が体内から消える時間は35時間×5の175時間、つまり約7日かかるとわかります。
また、副作用が出た場合に薬を中止したとしても、その症状は7日間続いてしまうということになります。
�Ｌ瑤良�作用かどうか
��1日に服用する回数の理由
・tmax(最高血中濃度の到達する時間)
�〆任盡�果が強く出るのはいつか
・Cmax(薬の最高血中濃度)
�，匹里�らい作用が強く出るのか
・V(血液中に入った薬の割合)
�〔瑤�どれだけ血液中に入るのか
・AUC(血液中に入った薬の量)
�〔瑤�どれだけ血液中に入るのか
�△匹里�らい作用が強く出るのか
・Vd(薬が分布する場所の大きさ)
�〔瑤里�どれくらい組織に移行しやすいか
�△匹Δ靴童�果が長く続くのか
��どうして血中濃度が高くなるのか
・CL(薬を排泄する能力)
�，匹譴世鰻豈佞�ら薬を除去できるか
代表的な公式
・体内薬物量=Cp×Vd
・−dt/dt=kel×Cp
・CLtot=kel×Vd(1ーコンパートメント)
・服用間隔/t1/2=X
【X≦3】→効くのに時間がかかる薬(効く時間・効かなくなる時間＝t1/2×5)
【3<X≦4】→どちらの可能性がある
【4<X】→すぐ効く薬
・Cssave=F×S×D/τ×Vd×kel
・Cssmax=Cssave+(F×S×D/2Vd)
・Cssmin=Cssave-(F×S×D/2Vd)
・V=AUCp/AUCiv
・fup=尿中未変化量/D
・fu=尿中未変化量/D×V
=fup/V
・eGFR=194×Scr-1.094×年齢-0.287
女性の場合、0.739を掛ける
・Ccr=(140-年齢)×体重/72×(Scr＋0.2)
女性の場合、0.85を掛ける
Scrのデータがなく、年齢が40才以上だったときのおおよその目安
・Ccr=100-(年齢-40)
・G=1-fu×(1-[Ccr/100])
・腎機能が低下した人の投与量=D/日×G
・腎機能が低下した人の投与間隔＝τ/G
・体表面積=身長0.663×体重0.444×0.008883(藤本式)
=身長0.725×体重0.425×0.007184(デュアピ式)
・高齢者の消失半減期＝t1/2/1-fu×(100-高齢者Ccr/100)
・高齢者の消失時間=t1/2×10
・M/P比=乳汁中濃度/母体血液中濃度
・1日の乳児薬物摂取量=乳汁中濃度×哺乳量/日
=母体血液中濃度×M/P比×哺乳量/日
【1未満】→乳汁中への移行少ない
【1以上】→乳汁中への移行多い
・RID(%)=体重当たりの乳児薬物摂取量/体重当たりの母体薬物摂取量
→10%以下であれば安全に授乳できる
添付文書に記載されているパラメーター*(t1/2、Vdなど)を使うことによって薬の動きがわかります。そうすることで、患者さんからの「この薬は飲んでからどれくらいで効くの？」や「腎臓が悪いんだけどこの薬は飲んでも大丈夫？」といった質問にも、根拠をもって答えることができるようになります。
＊パラメーターとは、数学のy=ax+bの"y"や"x"のような値を代入する記号のことをいいます。
薬物動態のパラメーターからわかること 
代表的なパラメーターとして以下のものがあります。
・t1/2(半減期、[hr])＊hr＝〜時間
血液中の薬物濃度が半分になるまでにかかる時間です。
・tmax(最高血中濃度到達時間)
薬の最高血中濃度に到達する時間です。
・Cmax(最高血中濃度)
薬を飲んで最も高くなる血中濃度です。
・AUC(血中濃度曲線下面積)
血中濃度のグラフの面積です。
・F(バイオアベイラビリティ[%])
飲んだ薬がどれだけ血液中に到達するかを表します。
静脈注射はすべて血液中に入るので、Fは100%となります。
・Vd(分布容積[L/kg])
薬が血管から組織にどの程度広がるのかを表します。
イメージとしては、粉ジュースを作るときの水の量が分布容積にあたります。
図
＊本来、体内に入った薬は分布する場所(例：肝臓や腎臓、脂肪など)によってそれぞれ濃度が違います。
ですが、Vdは「薬はどこに存在していても、すべて血中濃度と同じ濃度で体内に存在している」と仮定し求められています。
＊＊細胞外液が増える
・CL(クリアランス[ml/min])
一定時間内に、血液から体の外に薬をどれだけ排泄できるかを表します。
・t1/2
�，い弔�ら薬が効き始めるのか
薬には、"すぐに効く薬"と"効くのに時間がかかる薬"の2種類があります。
どちらの薬かどうかは、「服用間隔(時間)÷薬の半減期(時間)」の値でわかります。
このときに、計算結果が
【0〜3】の間であれば"効くのに時間がかかる薬"
【3〜4】の間であれば"グレーゾーン(血中濃度が上がらない場合もある)の薬
【4】以上であれば"すぐに効く薬"となります。
つまり、まとめると以下のようになります。
画像
|〜すぐに効かない〜|グレーゾーン|〜すぐに効く〜|
0-------------------3-------------4---------------∞(服用間隔/半減期)
また、"すぐに効かない薬"だった場合、「半減期(時間)×5」をすることで薬が効き始めるおおよその時間がわかります。
実際に代表的な薬であるロキソニンとアムロジピンで計算してみます。
ちなみに、t1/2は単回投与よりも連続投与のほうが実際の飲み方に近いため、より正確に予測しやすくなります。、
例1.ロキソニン
ロキソニンであれば、通常1日3回飲むので服用間隔は8時間となります。
また、半減期は添付文書の薬物動態の値から約1.25時間とわかります。
上記の式にこれらの値を当てはめると、8(時間)÷1.25(時間)＝6.4となります。
値が4以上なので、「ロキソニンは"すぐに効く薬"である」とわかります。
例2.アムロジピン
アムロジピンは、通常1日1回で飲むので服用間隔は24時間、そして半減期は35時間です。
上記の式にこれらの値を当てはめると、24(時間)÷35(時間)＝0.68となります。
値が0〜3の間なので、「アムロジピンは"すぐに効かない薬"である」とわかります。
そして、薬が効き始める時間は35(時間)×5の175(時間)、つまり飲み始めてからおおよそ7.3日目となります。
�¬瑤鮹羯澆靴討�らどのくらいで効かなくなる(副作用がなくなるのか)のか？
一般的に、薬が体内から消えるのにかかる時間はt1/2の約５倍と言われています。
それは、t1/2が5回続くと1/2×1/2×1/2×1/2×1/2、つまり元の血中濃度と比べて1/32(3/125%)となり、ほとんどの薬は体内から消えていると考えられるからです。
ただ、高齢者やVdが大きく組織移行性の高い薬に関しては、体外に排泄するのに時間がかかるため注意が必要です。
実際にアムロジピンで計算してみます。
アムロジピンのt1/2は35時間ですので、薬が体内から消える時間は35時間×5の175時間、つまり約7日かかるとわかります。
また、副作用が出た場合に薬を中止したとしても、その症状は7日間続いてしまうということになります。
�Ｌ瑤良�作用かどうか
��1日に服用する回数の理由
・tmax(最高血中濃度の到達する時間)
�〆任盡�果が強く出るのはいつか
・Cmax(薬の最高血中濃度)
�，匹里�らい作用が強く出るのか
・V(血液中に入った薬の割合)
�〔瑤�どれだけ血液中に入るのか
・AUC(血液中に入った薬の量)
�〔瑤�どれだけ血液中に入るのか
�△匹里�らい作用が強く出るのか
・Vd(薬が分布する場所の大きさ)
�〔瑤里�どれくらい組織に移行しやすいか
�△匹Δ靴童�果が長く続くのか
��どうして血中濃度が高くなるのか
・CL(薬を排泄する能力)
�，匹譴世鰻豈佞�ら薬を除去できるか
代表的な公式
・体内薬物量=Cp×Vd
・−dt/dt=kel×Cp
・CLtot=kel×Vd(1ーコンパートメント)
・服用間隔/t1/2=X
【X≦3】→効くのに時間がかかる薬(効く時間・効かなくなる時間＝t1/2×5)
【3<X≦4】→どちらの可能性がある
【4<X】→すぐ効く薬
・Cssave=F×S×D/τ×Vd×kel
・Cssmax=Cssave+(F×S×D/2Vd)
・Cssmin=Cssave-(F×S×D/2Vd)
・V=AUCp/AUCiv
・fup=尿中未変化量/D
・fu=尿中未変化量/D×V
=fup/V
・eGFR=194×Scr-1.094×年齢-0.287
女性の場合、0.739を掛ける
・Ccr=(140-年齢)×体重/72×(Scr＋0.2)
女性の場合、0.85を掛ける
Scrのデータがなく、年齢が40才以上だったときのおおよその目安
・Ccr=100-(年齢-40)
・G=1-fu×(1-[Ccr/100])
・腎機能が低下した人の投与量=D/日×G
・腎機能が低下した人の投与間隔＝τ/G
・体表面積=身長0.663×体重0.444×0.008883(藤本式)
=身長0.725×体重0.425×0.007184(デュアピ式)
・高齢者の消失半減期＝t1/2/1-fu×(100-高齢者Ccr/100)
・高齢者の消失時間=t1/2×10
・M/P比=乳汁中濃度/母体血液中濃度
・1日の乳児薬物摂取量=乳汁中濃度×哺乳量/日
=母体血液中濃度×M/P比×哺乳量/日
【1未満】→乳汁中への移行少ない
【1以上】→乳汁中への移行多い
・RID(%)=体重当たりの乳児薬物摂取量/体重当たりの母体薬物摂取量
→10%以下であれば安全に授乳できる
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